2022年9月16日、株式会社オーバースよりWHITE SCORPION(ホワイトスコーピオン)の総合プロデューサーに、秋元康氏が就任することが発表されました(当時はまだIDOL3.0プロジェクト)。
(追記※2023年10月7日にグループ名は“WHITE SCORPION”ホワイト スコーピオンと発表されました)
普段、アイドルにさほど興味がない人でも「おニャン子クラブ」や「AKB48」「乃木坂46」に至るまで、プロデューサーとして数々の敏腕ぶりを発揮してきた人物であることはご存じのはずです。
この時期、乃木坂48公式ライバル(2023年6月15日に「僕が見たかった青空」としてデビュー)をはじめ、デビュー予定のアイドルは他にも多い中で、秋元康氏はなぜWHITE SCORPIONの総合プロデューサーを引き受けたのでしょうか。
- WHITE SCORPIONの新しい試みに秋元康が共感した
- 秋元康とレコート会社・レーベルとの深い関係性
- 秋元康がかつて思い描いたアイドルが未だ完成していない
以下、詳しく解説していきます。
なぜ秋元康はWHITE SCORPIONのプロデュースを引き受けたのか?
引用元:NIPPON IDOL TOKEN whitepaper
これからアイドルグループを発足しようとする運営にしてみれば、プロデューサーに誰を据えるかは最も重要でした。
特にWHITE SCORPIONの場合「暗号資産による活動資金の調達」を宣言していたことから、プロジェクトに対する信用を得る為にも秋元康氏の就任は絶対と言う気持ちがありました。
実績や認知度で申し分のない秋元康氏には、おそらく他にも様々な所から新たなアイドルプロデュースのオファーはあったはずです。
秋元氏はどのような考えや理由があって、このオファーを引き受けたのでしょうか。
WHITE SCORPIONの新しい試みに秋元康が共感した
まず第一に、株式会社オーバース経営陣の粘り強い説得があったことは間違いありませんが、このプロジェクト自体に秋元氏が強く共感したからではないかと言われています。
秋元康の性格
秋元氏は過去のインタビュー等で度々予定調和(の破壊)という言葉を用いています。
この言葉の意味は「既成概念にとらわれないで新しい突出した試み」をすることであり、皆がすぐ真似できるような企画はしたくないという考えが根底にあります。
当時、IDOL3.0プロジェクトが掲げていた「新しいアイドルの創造」は、まさしく秋元氏の言う「予定調和」を壊す企画だと受け止められたのでしょう。
ネットや仮想空間への興味
秋元氏は、かつてライブドア傘下のコンテンツ配信会社「サイバーアソシエイツ」の取締役に就任した過去があります。
その後10年以上を経てからですが、バーチャル声優アイドル「22/7」のプロデュースで、ネットや2次元、仮想空間等への関わり方が急激に深まっていきました。
WHITE SCORPIONが予定するメタバースやブロックチェーンといったキーワードに秋元氏が興味を抱かないわけがなかったのです。
秋元康氏は、誰もが驚くような企画を考えたいと言う想いから「サプライズ」という言葉もよく用います。
◆WHITE SCORPIONが予定するメタバースに関しては別記事で詳しく解説しています。
秋元康とレコート会社・レーベルとの深い関係性
- AKB48:デフスターレコーズ(後にキングレコード、2023年にはEMIに移籍)
- 坂道シリーズ:ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)傘下
AKB48無名時代
AKB48はまだ無名だった時代、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下SME)のデフスターレコーズに所属していました。
しかし、何年も芽が出ず赤字続きだったのでデフスターレコーズが契約を打ち切ったと言われています。
その後、AKB48は仕方なくキングレコードへ移籍したのですが、周知のとおり移籍した途端に人気が急上昇し、国民的アイドルといわれるまでになってしまいました。
この時の話は、AKB48がデフスターレコーズと契約していた時代のシングルPV集「逃した魚たち」になぞらえて「逃した魚は大きかった事件」とよく自嘲気味に語られます。
乃木坂46誕生秘話
AKB48という「逃した魚」を悔やんでいたSMEが、秋元氏から新たな女性アイドルプロジェクトを任され「AKB48にぶつかっていきたい」と言う想いで誕生したのが乃木坂46でした。
初めはなかなか首を縦に振らない秋元氏をようやく説得して、乃木坂46のプロジェクトを任せてもらえたようです。
AKB48のシャドーキャビネットを作ることについて、もう一度ソニーミュージックから提案させてもらえないかとお願いし、1年弱、秋元先生のところに通いました。
引用元:東洋経済オンライン
AKB48でさんざん尽力してくれたSMEの恩に報いるために、秋元氏は最終的に乃木坂46のプロジェクトをSMEに任せる決断をしています。
ソニーミュージックがAKB48に多大な投資をして苦労したのに、キング移籍後に大ブレイクして「申し訳ない」との気持ちから、「新しい女性アイドルグループをソニーで立ち上げた」と説明している。
引用元:東洋経済オンライン
WHITE SCORPIONのレコード会社はキングレコード
さて、以上のような経緯を経つつ再びキングレコードがプロジェクトを任されることになりました。
- AKB48:初めはSME、後にキングレコード
- 坂道シリーズ:SME
- WHITE SCORPION:キングレコード
このことから、SMEとキングレコードは秋元プロデュースアイドルを交互に任されてきたという印象が強く感じられます。
「因縁がある」と言えば少し大げさですが、少なくともIDOL3.0プロジェクトでキングレコード側は間違いなく「坂道シリーズを追い抜いてやる」という気概を持っているはずです。
つまり、AKB48の後に乃木坂46の時代が到来したように、任されてきたレコード会社とレーベルも時代とともにその盛衰を繰り返してきたのです。
「SMEが坂道シリーズで名を馳せたなら、次はキングレコードの番」
秋元氏がそう考えていたかどうかは定かではありませんが、再びキングレコードが担うアイドルをプロデュースする機会が実際に到来しました。
秋元氏は、ある程度グループが育ったら自分は離れるというスタンスを持っており、その時期が来ると、ほどなく何か新しい企画を創造する傾向があります
秋元康がかつて思い描いたアイドルが未だ完成していない
WHITE SCORPIONは「リアルとバーチャルを行き来するアイドル」であり、その活動領域は国内だけでなく、海外をも視野に入れています。
このことは非常に斬新な企画のように感じますが、実は以前から同じ秋元康プロデュースで、すでに試みられていたことなのです。
- バーチャルアイドル⇒22/3(ナナブンノニジュウニ)
- 海外で活躍するアイドル⇒JKT48などAKB48の姉妹グループ
しかし、どちらも様々な問題点が浮き彫りとなり、グループとして大成したかと言えば、まだ道半ばの状態です。
デジタル声優アイドル22/7(ナナブンノニジュウニ)
22/7はキャラクターと実在のアイドルの2軸で展開されているアイドルプロジェクトです。
リアルメンバーがキャラクターの声やモーションを担当し、自身も実在のアイドルとしてライブパフォーマンスを行うなど、バーチャル/リアルそれぞれでアイドル活動しているのが特徴である。
引用元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
WHITE SCORPIONでも、リアルなアイドル活動の他にアバターによる仮想空間のイベントやライブを予定しているので、そのコンセプト自体は22/7と非常に近い存在です。
しかし、22/7はメンバーの卒業や脱退が続いており、無断欠席による活動停止になったメンバーもいるなど、これまで多くの問題が発生してきました。
showroomや動画配信の登録者数なども今一つ伸び悩んでいる為、WHITE SCORPIONに秋元氏が興味を抱いたのは同じ轍を踏まないように、新たな構想を打ち立てる用意があったからなのかもしれません。
AKB48海外姉妹グループとクールジャパン
秋元氏が目指す考え方のひとつに日本のエンターテインメントの海外進出があります。
これは日本独自の文化を海外に広め、日本の経済成長を目指すと言う内閣府の「クールジャパン」戦略と結びつき、メディアにもよく取り上げられてきました。
秋元氏は、初の海外姉妹プロジェクトだったJKT48(インドネシア・ジャカルタ拠点)が成功し、その後も中華人民共和国・上海を拠点とするSNH48、タイ・バンコクを拠点とするBNK48と拠点を広げていったのです。
しかし、日本のアイドル文化の発信には多くの問題も浮き彫りになりました。
- 国の法律や規制が厳しい
- 宗教的な配慮が必要(ライブ日程や衣装など)
- コロナ感染症の流行
このような理由で、計画していた新ブループの発足ができなかったり、思うように活動できずに解散してしまったりということがあったのです。
秋元氏は「クールジャパンは期間限定であってはならない」と語っており、また「一過性で盛り上がっても仕方ない」とも述べています(2015.3 電通報)。
従って、秋元氏の目指すクールジャパンはまだ道半ばと言え、仮想空間でその活動領域を広げていくWHITE SCORPIONは、まさしく、コロナ禍でも左右されない新たなクールジャパンが目指せる可能性を秘めていたのです。
◆秋元康氏の就任に関しては、実はもう少し穿った見方もあります。
まとめ
- 秋元康がWHITE SCORPIONの総合プロデューサーを引き受けた理由は3つある
- メタバースの活動領域などプロジェクトが予定調和でないことに共感した
- ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)とキングレコードの2大レーベルが秋元プロデュースアイドル成功の歴史であり、次はキングレコードに任せる時期が到来した
- WHITE SCORPIONが目指すバーチャルと海外進出は一過性であってはならず、かつてプロデュースしたアイドルは大成したとは未だ言えないため、新たなプロジェクトに賛同した
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