2023年10月7日、WHITE SCORPIONは最終合格者11名の発表と同時に、デビュー曲「眼差しSniper」を12月7日に配信シングルでリリースすることを発表しました。
デジタル配信の推進に関しては、運営がIDOL3.0プロジェクトの発足当初から明言してきたことではありますが、デビュー曲からさっそくの配信シングルとなりました。
配信シングルはインターネットを通じて配信される楽曲を、ダウンロードやストリーミング方式で聞くため、ファンは記念すべきデビュー曲をCDという形で手元に置くことができません。
そういったデメリットがありつつも、WHITE SCORPIONの「眼差しSniper」をCDではなく配信シングルに決めた理由は2つあります。
それは、WHITE SCORPIONが海外進出を視野に入れていること、そして率直にCD販売ではもう戦えないからです。
以下、詳しく解説していきます。
「眼差しSniper」はIDOL3.0プロジェクトで誕生したWHITE SCORPIONのデビュー曲。
2023年5月2日22:00 に公式SNS(YouTube Shorts、Instagram、TikTok)にて歌詞とともに公開された。
まだ誰がメンバーになるのかもわからないオーディション中に、いわゆる仮歌で早々に公開されたのはかなり異例だった。
作詞は秋元康氏、作曲&編曲は中村泰輔氏とTomoLow氏の両名で、振付けはTAKAHIRO氏、MVは池田一真氏が監督を務める。
- 秋元康:総合プロデューサー
- 中村泰輔・TomoLow:櫻坂46「マンホールの蓋の上」日向坂46「最初の白夜」など多くの共作曲、共編曲を手掛ける
- TAKAHIRO:本名は上野 隆博。これまでも坂道シリーズの数多くの振付けを担当
- 池田一真:坂道シリーズにとどまらず、数多くのアーティストのMV作品を制作。櫻坂46「流れ弾」では「MTV VMAJ 2021」最優秀邦楽新人アーティストビデオ賞を受賞している
なぜ「眼差しSniper」はCDではなく配信シングルになったのか?
#WHITESCORPION
デビュー曲からCDではなく配信でいくんですね。
時代ですね。 https://t.co/uLf2G5tCLz— いりうわ@GEG (@hAvBaMCjndMfUTv) October 13, 2023
web3.0を標榜するIDOL3.0プロジェクトから生まれたWHITE SCORPIONが、デジタル音楽配信と言う時代の潮流に乗るのは当然ではあります。
配信シングルは海外進出への布石
- コストを抑えられる
- タイムラグが小さい
- 世界で聴いてもらえる
女性アイドルグループが海外展開を行うためには、物流コストやタイムラグが発生する物理的なパッケージソフトの販売に依存するだけでは不十分であり、ストリーミング配
信や動画サイトを通じた楽曲や映像が必須になると思われます。引用元: NIPPON IDOL TOKEN whitepaper
コストを抑えられる
CDやDVDといったいわゆるパッケージソフトを制作流通させる工程においては、写真や歌詞のデザインブックレット、プレスやリッピング費用などでかなりのコストがかかってきます。
配信シングルでリリースする場合でも、ジャケットデザインなど色々とこだわればコストはかさむでしょうが、CD制作よりははるかに安く仕上げることができます。
きちんと形が残るものを国内だけ重点的に販売することよりも、物流コストをかけずに広く海外へ曲を届けることを選んだというわけです。
また、株式会社オーバースは暗号資産を販売する関係上、定期的に情報開示をする義務を負っています。
調達資金の使途やWHITE SCORPIONの進捗を報告する上で、アイドルのメイン活動とも言うべき楽曲リリースのコスト削減をアピールできるのは結構な利点でもあるのです。
タイムラグが小さい
タイムラグが小さいというのは、CDの場合は上述したような制作工程がある分、リリースまでが遅くなりますが、これらを省ける配信シングルはリリースが早くなるという意味です。
様々な国で楽曲を聴いてもらいたいと考えるなら、リリースまで時間がかかるCDよりも配信シングルの方が、よりタイムリーに曲を届けることができます。
デビュー曲であれば、やはりグループがデビューしたその日に好きなだけ聴けた方がよいでしょう。
実際は制作会社やレーベルの戦略によるとも言われていますが、一般的に配信シングルはCDより数週間から数カ月リリースが早いとされています。
世界で聴いてもらえる
一般社団法人日本レコード協会のデータによると、 2021 年の日本国内のレコードの生産実績と配信売上実績の合計は 2,832 億 円(前年比 104% ) となっており、パッケージソフトと音楽配信(ダウンロードやサブスクリプション等)の比率は6 8:32 (前年71:29)となっています。一方、全世界のパッケージソフトの割合は19%(2020年、国際レコード産業連盟)に留まり、国際的にはすでに音楽配信が主流になっています。
引用元: NIPPON IDOL TOKEN whitepaper
つまり、日本はまだまだCDに依存し続けていますが、世界の国々ではすでにデジタル音楽配信が主流なのです。
例えば、音楽配信サービスとして世界最大手のSpotifyは「現在180以上の国と地域で2億2,600万人の有料会員を含む5億7,400万人のユーザーが利用する」とされています。
このような音楽配信サービスを利用することによって、WHITE SCORPIONの「眼差しSniper」も、例えばスマホひとつで、世界中のユーザーに聴いてもらうことが可能になるのです。
主な音楽配信プラットフォームのうち、SpotifyとApple Musicは有名で、世界の会員数におけるシェア(占有率)の1位と2位です(※2019年~無料会員を含む)。
CD販売ではもう戦えない?
すでにデジタル音楽配信が世界の主流であることは上述しましたが、国内のCD販売は実際のところ苦境に立たされているのでしょうか。
秋元康プロデュースのわかりやすいところで、坂道シリーズのCDから公式ライバル「僕が見たかった青空」のデビューシングルまでの初週売り上げを比較した表が下記になります。
グループ名 | デビュー曲 | リリース日 | 初週売り上げ | ||||
乃木坂46 | ぐるぐるカーテン | 2012年2月22日 | 13.6万枚 | ||||
日向坂46 | キュン | 2019年3月27日 | 47.6万枚 | ||||
櫻坂46 | Nobody’s fault | 2020年12月9日 | 40.9万枚 | ||||
僕が見たかった青空 | 青空について考える | 2023年8月30日 | 2.4万枚 |
出典:エケペディア
表からは、僕が見たかった青空(以下、僕青)の初週売り上げが一気にガクンと落ち込んでいることがわかります。
この結果だけを見て、単純に「皆がCDを買わなくなった」からだと判断するのは早計ですが、デビュー曲でCDを購入してもらうことが、かなり厳しいことは如実に示されました。
実際、2023年7月26日にリリースされた日向坂46の「Am I ready?」は、初週44.8万枚を売り上げ好調でした。
配信シングルなら売れるのか
とはいえ「では僕青も配信シングルにすれば売れたのか」と聞かれれば、一概にそうとも言い切れません。
実は「青空について考える」も2023年7月11日にに各音楽配信サイトで先行配信されており、総合的に集計したビルボードでも、初週売り上げは2.8万枚に止まっているのです。
もっとも、楽曲が売れるかどうかは様々な要因が絡みますから、WHITE SCORPIONの「眼差しSniper」が同じ轍を踏む可能性もあるでしょう。
ただし、そのような状況下でコストのかかるCDでは戦わず、配信シングルでリリースを決めたことは賢明だったと言えるのかもしれません。
もっとも、CDを完全に捨てたわけではないはずです。配信リリース後にCD販売を決めたり、後にアルバムに収録してCDを販売することはよくあります。
※追記 2024年5月7日「ニコドル生配信」においてミニアルバム初CDリリースの決定が告知されました。
ブロックチェーンを利用した音楽配信サービスの存在
最後にAudiusというブロックチェーンを利用した音楽配信サービスについて少し触れておきます。
Audiusは、SpotifyやApple Musicのようなプラットフォームと基本的には変わらないのですが、最大の特徴はアーティストの報酬が高くなることです。
これはブロックチェーンの技術を用いてアーティストとファンを直接つなげることができるためで、暗号資産を使って限定コンテンツを聴いたり、アーティストに投げ銭をすることも可能です。
これらAudiusの特徴は、IDOL3.0プロジェクト始動時の趣旨と非常に共通している部分があります。
配信シングルリリースの最大の理由は、あるいはオーバースがAudiusのような高還元のプラットフォームでNIDTを活用した音楽配信を将来的に目指しているからなのかもしれません。
◆WHITE SCORPIONのデビュー曲「眼差しsniper]のフォーメーションと歌詞についてはこちら
まとめ
- 「眼差しSniper」を配信シングルにした理由は海外展開とCDが売れない時代の潮流に乗ったから
- 配信シングルのメリットは当初から運営が海外展開するための条件として念頭に置いてきたこと
- CDが売れない理由はアーティストによって様々な要因があるが、デビュー曲を高コストでCDリリースして戦う意味はない
- ブロックチェーンを利用した音楽配信サービスが台頭してきつつあるが、あるいはこれがオーバースにとってデジタル音楽配信を推進する最大の理由なのかもしれない
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